慢性膵炎ノート

明るく!慢性膵炎生活

慢性膵炎の診断基準(その1)

    

診断基準の変遷

  慢性膵炎とはどんな病気なのかということについて、基本的に、「何らかの原因によって膵臓の消化酵素の分泌機能に異常が起こり、それが痛みや消化不良などの症状を引き起こし、進行性で、治りがたい疾患である」という点ではどの説明も一致するようですが、その原因や異常のあり方が実に多様なので、医学界でもこれまで定義の確定には苦心してきたようです。
  従来、日本消化器病学会による定義(1983)や日本膵臓学会による診断基準(2001)があり、医学界の別々の団体がそれぞれ定義づけをするという、素人にはややわかりにくい状況があったようなのですが、2009年になって、統一的な定義(慢性膵炎臨床診断基準2009)が出されました。
  この改訂はかなり大きな変化だという印象を受けます。
まず、慢性膵炎を二つの単純なカテゴリー、すなわち「アルコール性」と「非アルコール性」に分類したということが大きな特徴です。それまで常識であったとはいえ、アルコールが膵炎の大きな要因の一つであることを明文化したことは新鮮で、意義が大きいと思います。非アルコール性については、「特発性、遺伝性、家族性など」とし、それ以上の細かい分類はされていません。
  また、従来は慢性膵炎として分類されていた自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎について、それらが「可逆性」であるという理由で慢性膵炎とは別物として扱おうということにしています。
  「慢性膵炎の中にも可逆性のものがある」という考え方ではなく、「可逆性なものは慢性膵炎とは呼ばないようにしよう」という、これもまた分類をシンプルにしようとする考え方のようです。ですから定義の上で「慢性膵炎が非可逆的である」ということは変わっていません。しかし、自己免疫性膵炎あるいは閉塞性膵炎という診断を受けておられた(また、これから受けられるであろう)方々にとっては、それらが可逆性、つまり回復することがあるということが認められたわけで、どちらかと言えば朗報なのではないでしょうか。この二つの膵炎については「膵の慢性炎症」というふうに呼ぶようです。(「慢性膵炎」と「膵の慢性炎症」が違う意味である、ということであり、ちょっとややこしいですね。)
  新しい定義ではさらに、「早期慢性膵炎」の概念が導入されています。私は、ブログやホームページなどで様々な症例を拝見してきた経験や、書籍で得た情報から、慢性膵炎が従来の定義に示されていたような症状になるのは、相当進んだ場合ではないかという印象を持っていました。今回の早期慢性膵炎という新カテゴリーの導入は、従来の定義付けにまでは至らないけれども、膵臓の異常による様々な激しい症状に苦しんできた方々にとって、自分たちはこういう病態だったのはないかという、ある程度、気持ちの落ち着く病態の説明となっているという点で極めて有意義だと思います。
  では「早期慢性膵炎」が、やはり非可逆的なのか、あるいはひょっとしたら可逆性なのか、という点ですが、これについては、日本膵臓学会の関連ページによれば、まだ定まっていないということのようです。
  私自身の症状は慢性膵炎疑診ということになると思うのですが、自分の体験では、病状からの完全回復はないにしても、進行を食い止めるということはできる、つまり寛解の状態に落ち着かせることはできるのではないかと感じているので、今後はそれが個人の勘違いではなく、医学的にも裏付けのある病状の一形態として認めらてもらえないかなぁと期待しているところです。もし、そうなったら、私のように、慢性膵炎と診断されて本やネットで膵炎の定義を調べたら絶望的な説明しかなくて、生きる気力がなくなるくらい気落ちしてしまった、という体験をする人が減るのではないでしょうか。
次ページより、今回の画期的な定義付けをはじめとして、従来からの定義、また医療関係のサイトや書籍による定義、私の個人的な(遊びですが)定義を紹介します。

arrow  前ページ          次ページ  arrow