慢性膵炎ノート

明るく!慢性膵炎生活

管理人プロフィール

名前

カオル

性別

男性

年齢

1960年代前半生まれ。現在(2008年)40代後半。

家族

妻と息子3人

慢性膵炎体験談

発症は1997年です。しつこい痛みがみぞおちあたりに起こり、数週間後に慢性膵炎と診断されました。アルコール性です。飲酒は毎日のようにしていましたが、病気になるほど多くのアルコールを毎日飲んでいたという自覚はありません。ただ飲むときにはかなり飲んでしまっていたのでその点が膵臓にはダメージだったかもしれません。
発症からブログを始める2005年までの経緯を以下に紹介します。


 35歳の時でした。毎晩のように晩酌をしていたのですが、ある日、みぞおちの辺りがなんとなく張ったような感じがしてちょっと酒の飲み過ぎかなぁ、と思いました。しかし、違和感を持ちながらも飲酒を続けました。するとその違和感がだんだん強くなり、痛みに変わりました。怪我でもないのに痛みがしつこく続くので不安を覚え、近所の総合病院に行きました。
 病院では血液や尿の検査を行いましたが特に異常はありませんでした。「しばらく様子を見ましょう」ということになったのですが、その後も痛みは続きました。
 数日後、痛みが消えないので再びその病院で検査をしてもらいました。やはり特にこれといった異常がなく、そのまま帰りました。痛み出してからは禁酒をしていたので肝機能は回復しており、γGTPやその他肝臓の指標は良くなっていたのですが相変わらず痛いのです。
 それで、次にその病院に行ったときは、別の先生の診察を受けさせてもらうことにしました。母親が信頼している主治医です。するとその先生は私のカルテを見て「慢性膵炎かも知れません」と言われました。「マンセースイエン?」聞いたことはありませんでしたがとにかく、膵炎用の点滴を処方してくれました。
 すると驚いたことにそれまで何日間も私のみぞおちに居座っていた痛みが、点滴と共にきれいに消えたのです。数週間も心に重くのしかかっていたものがたった一回の点滴で消え去ったのです。私にはその先生が神様のように見えました。後で知ったのですが、その薬はミラクリッドという、急性膵炎や川崎病などに使われる炎症を抑える薬でした。
 膵炎らしいという診断で、食事制限の指導がありました。まず禁酒。これは慢性膵炎の場合絶対の条件のようです。それに動物性脂肪をとらないようにという指示もありました。薬はフオイパンという薬を処方されました。
 それから好きだった酒を断ち、また食事は和食中心となりました。その頃1歳ぐらいだった長男は、おかげで和食党に育っています。ミラクリッドが効いて、強い痛みはなくなりましたが、時々油物を口にすると痛みました。例えば牛乳を飲むと途端に痛くなります。また肉は鳥のササミぐらいで、焼き鳥や焼き肉、ステーキなどはもってのほかでした。診察後3ヶ月くらいして九州に出張に行った際、豚骨ラーメンを口にしたのですが、その後2、3日は強めの痛みに苦しみました。(数年後、家族で親戚の家に遊びに行った時にその家のご主人が「今日はステーキでも食べようか」と言うのを聞いて長男が「ステーキって何?」と彼にとっては当然の疑問を発しました。「いつも食べてるやつよ」と答えておきましたが・・・)
 フオイパンをいつまで飲んだのか覚えていませんが、数ヶ月後、飲まなくても痛みが出ないような状態まで回復しました。
 食事も徐々に普通食にしていき、牛肉や豚肉を食べてもあまり痛みが出ないようになりました。その後、3年間は、禁酒以外は特にこれといった制限もなく日常生活を送ることができました。ただ、時々仕事がたてこんでくると思い出したように痛くなりました。
 3年後、東北に出張の機会がありました。いつも宴会ではウーロン茶ばかり飲んでいたのですが、そのときは旅の開放感からか、ビールに口をつけてしまいました。初めて診断を受けた直後も妻が飲むビールを一口頂戴したことはあったのですが、翌日にひどい痛みに襲われたのですぐ止めました。それ以来3年間完全禁酒でした。さて、出張先で3年ぶりに飲んだビールは最高の味でした。そして、覚悟していた後遺症ですが、これがなんと、翌朝目覚めても大した違和感がないのです。あれ、治ったのかな?と嬉しかったことを覚えています。
 その後は酒に対しても少し自信を取り戻し、職場の宴会などの機会にビールを少し飲み始めました。
 もう一生味わえないと思っていた、飲んで騒ぐ楽しさは格別のものでした。
 それが2年位続いたと思います。酒を飲んだ翌朝は、少し左脇腹から背中にかけて痛むのですが、すぐ消えるのです。だからあまり気にならない。またフオイパンもずっと必要ない。つまり酒を飲んでもよいし、膵炎の薬を飲む必要もない。ということはこれは病気の状態とは言えないのではないか、ひょっとするとオレは初めから慢性膵炎ではなかったのではないか?という都合の良い考えも頭に浮かび始めました。
 ところが、そんなある日、家でノンアルコールのビールを飲んだ時のことです。翌朝、左脇腹から背中にかけてが異様に痛いのです。「きたきた」と思いました。ノンアルコールでも1%未満のアルコールが入っています。それに、てきめんに反応したのです。
 痛みはかなりひどいもので、たまらず病院に駆け込み、ミラクリッドの点滴をしてもらうほどでしたが、3年前とは違い、一向に消えませんでした。それどころかどんどん強くなります。フオイパンも再開しましたが痛みは強くなるばかり。痛みの場所も左脇腹にとどまらず肺の裏あたり全体が痛みました。まるで背骨側から内臓をわしづかみにされているかのような痛みです。職場にはなんとか出かけ、相当痛いのをがまんしながら仕事をこなしましたが、帰宅するとすぐ横になって、何もできない状態でした。食事もろくに取る気になれません。強烈な痛みは3週間から4週間続いたと思います。体重も5キロぐらい減りました。痛み止めも処方してもらったと思いますがあまり効果はありませんでした。
 ある時、親戚が遠くの方へわき水を汲みに行くというので誘われました。痛くて本当は家でじっとしていたかったのですが、いつも家族全員で付いていっており、一人だけ家にいることも気分が滅入る気がしたので一緒に行きました。その場所は針葉樹が鬱蒼と生い茂った山間部の沢の上流でした。車から降りた瞬間に、懐かしいような森の香りが辺り一帯に漂い、樹齢何百年という巨木の根元から、ほとばしるように水が湧き出ており、それが水蒸気となってマイナスイオンで空間全体を充たしているようでした。車内では、痛みから横になるような姿勢でしかいられなかったのですが、不思議なことにその空気に触れたとたんに、痛みがすっと和らぎました。
 慢性膵炎は非常に強い痛み(アタック)が繰り返すことが多いようです。その時はたまたまアタックが終わる時と、湧き水の場所に行ったときとが一致したのかもしれませんが、それだけではないような気がします。私は宮崎駿の「もののけ姫」にでてくる不老長寿の森のことを思ってしまいます。とにかくいつ終わるとも知れぬ痛みがそれで和らぎ、それから徐々に消えていきました。
 しかし、元通りの体調にはなりませんでした。少しの違和感がずっと続くようになりました。フオイパンも続けて飲みようにしました。
 ところでフオイパンという薬は小野○品という会社が製造しているものですが、かなり高価な薬です。私はその値段にどうも納得できず、なんとかジェネリック薬品を処方してもらえないかと考え、かかりつけの近所の内科の先生にお願いしてみました。先生は、少し渋っておられましたが、分厚い本で調べ、アーチメントという薬に変えてくれました。値段は数分の1です。効果は、自覚としては同じです。
 約半年が過ぎました。その間、好きなコーヒーもあまり飲まず、脂肪は動物性といわず植物性もあまり摂りませんでした。しかしアタックが再開しました。昨年(2004年)の年末から今年の1月にかけてのことです。年末で、職場が忙しく、ストレスが溜まったことと、正月に親戚の家をはしごして暴食をしたことがきっかけのようです。
 このアタックに対してはかなり徹底した食事療法とリラックス療法を試みました。もともと仕事熱心な方なので、手を抜くことに心理的抵抗を覚えるのですが、今回は思い切って職場でも上司や同僚に事情を訴え、負担を少し減らしてもらいました。また家内も低脂肪の料理を作ってくれました。アタック再開から2週間後に、診察のため職場を休み、近所の医院ではなく総合病院で診てもらいました。
 診察の結果は、エコーでも異常はなく、膵炎の指標であるアミラーゼやリパーゼも正常値の範囲内でした。かつて膵炎を見抜いてくれた先生がもはやその病院を去っており、新しい先生に診てもらわなければなりませんでした。その先生は私が、「背中や脇腹などあちこちが痛い」というと「おかしいなぁ。膵臓はこの辺ですよ」と私のみぞおちあたりを指し示し、「ただの神経痛でしょう」と言われました。
 この病気は痛みの度合いと、検査の数値や画像とが一致しない病気のようです。医者としても目に見えるデータがない限り、いくら痛みを訴えても「ただの神経痛」ということで片付けたくなるのかもしれません。しかし、もう少しこの病気についての知識があればもっと違った表現になっていたことだろうと思います。
 その日の午後、1人で隣町の温泉に出かけました。普段は温泉には子供を連れて行くのですが、平日でもあり、一人で行ったのです。
 仕事をさぼって温泉に行くというのは実に爽快です。
 今回も、その日をきっかけに痛みが和らいでいきました。
 しかし、今回のアタックは慢性的な違和感、あちこち場所や種類を変える痛みをずっと残しています。以前のように何も自覚症状がない、ということが最近ではほとんど無くなりました。また、げっぷがかなり出るようになりました。ちょっとしたストレスにもさらに敏感になっているように思います。
 慢性膵炎の診断を受けて以来、この1年間で大きなアタックを二度経験していますが、その度に、膵臓の基本的機能が段階的に損なわれているような気がします。
 慢性膵炎には代償期という時期と非代償期という時期があり、代償期は(なんとも嫌なネーミングですが)まだまだ膵臓が機能を果たす時期であり、非代償期は膵臓からの酵素の分泌がなくなり、インシュリンも出なくなるよう時期のようですが、アタックはその時期を早めるのではないかと素人考えでは思っています。
 気になるのは、代償期がどれくらい続き、非代償期にどのように悪化していき、どう対処すればよいのか、ということなのですが、ネットで調べた限りではどうもはっきりしません。個人差が大きいのでしょうか。「慢性膵炎歴25年」という文言を雑誌の記事で見たことがあります。「25年も死なないならまあいいか」って思いました。でもアメリカの、とある健康食品のサイトには7年以内に半数が亡くなるというショッキングな文言がありました。(その食品の効能を訴えたいので少し誇張しているのではないかと感じられます。)
 そのあたりのことを調べつつ、少しでも長生きし、できればまたおいしいお酒が飲める生活に戻りたいと願いながら、2005年の春を迎えている現在です。

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