慢性膵炎ノート

明るく!慢性膵炎生活

慢性膵炎と診断されたら(6/6ページ)

外科的治療(つづき)

  ERCPがややリスクが高いため、近年では超音波内視鏡検査(EUS Endoscopic Ultrasound)という検査がERCPに代わってなされることが多いようです。これは器具を体内に挿入する点ではERCPと同じなのですが、挿入する場所が胃や十二指腸までで、ERCPのようにそこから膵臓の入り口をこじ開けて器具を突入させるということはせずに、おとなしくそこでエコーをとるというもののようです。体内でのエコーですから普通の腹部超音波よりは遙かに病変を見つける精度が高く、かつ膵臓内には侵入しないので、ERCPよりは遙かに安全性が高いようです。ただ、この検査も超音波の画像をどう判断するかということについては医者の技能(よくお医者さん用のサイトで超音波画像の読み方の解説動画(DVDなど)が販売されていたりします)が関係するということと、この装置そのものを置いている病院が大病院に限られ、全国的にはまださほど多くないという難点もあるようです。
ERCPとEUS
ある医師によるERCPの詳しい説明
慢性膵炎診断における超音波内視鏡の役割
  検査の結果によっては手術に踏み切るわけですが、ERCPについては、その器具そのものが、手術の道具としても使われるようです。例えば膵管が狭まって膵液の流れが極端に悪い場合(「膵管狭窄(すいかん きょうさく)」)に、膵液の流れを確保するために、膵管の中にバイパスにあたるプラスチックなどの管(「ステント」)を挿入するというようなことです。
  やや先進的な外科的治療として、自家膵島移植というものがあります。これは、慢性膵炎の疼痛がひどい患者さんに対して、膵臓の大部分を切り取る手術を行い、同時に血糖値のコントロールに欠かせない膵島(ランゲルハンス島)を切り取られた膵臓から抽出して、体内(膵臓は大部分切り取っていますから肝臓へ)へ戻すという手術です。
  自分の膵島を自分の体に戻すので拒絶反応はなく、成功すればきわめて良好な予後が期待できる治療法です。 この手術はアメリカではよく行われているようですが、日本ではあまり臨床例はないようです。現在私の知っている範囲では「独立行政法人国立国際医療センター研究所」という医療機関で膵島移植プロジェクトを立ち上げておられます。
同研究所による膵切除+自家膵島移植術の紹介ページ
  なお、膵島移植は他人からの移植という方法もあります。ある医療関係のサイトによると、これは2004年から日本でも実施されましたが、その後、膵臓から膵島を分離する薬品(酵素)の製造過程で、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症する可能性のある牛の脳の抽出物が使われていることがわかって、2007年にいったん中止されたようです。しかしその問題も解決したのか、2012年6月から再開してよいということになっているようです。
  ただ、他人の膵島移植は日本の場合は(脳死ではなく)心肺停止のドナーの方からの移植が主とのことであり、その場合膵島の定着率が悪く、今後(2012年以降)のことはわかりませんが、2007年までの実績はあまり劇的には増えてはいなかったようです。
  膵島を移植する処置自体は、手術ではなく、なんと点滴で行うようです。しかし他人の膵島ですので、移植後は拒絶反応が生じるため免疫抑制剤の服用は欠かせないようです。
2004年から2007年3月までの国内膵島移植実績を紹介しているサイト

arrow  前ページ          次ページ  arrow