慢性膵炎ノート

明るく!慢性膵炎生活

雑誌『膵臓』慢性膵炎臨床診断基準2009

診断基準の概要と経緯 下瀬川徹*
   はじめに 日本における慢性膵炎診断基準の歴史は,1971年に日本膵臓病研究会が提案した「慢性膵炎の臨床診断基準」(Table 1)1)に始まる.その後,各種画像検査の進歩を取り入れ,1983 年に日本消化器病学会慢性膵炎検討委員会が作成した「慢性膵炎の臨床診断基準」(Table 2)2)に発展した.この診断基準によって,画像所見や機能検査データが集積され,解析結果に基づいた「慢性膵炎臨床診断基準」が,日本膵臓学会慢性膵炎臨床診断基準検討委員 会によって1995 年に完成された3).わが国ではこれまで,1995 年の診断基準にMRCP 所見を準確診に加えて改訂した「日本膵臓学会慢性膵炎臨床診断基準2001」(Table 3)4)を診断基準として用いてきた.今回の改訂はわが国における慢性膵炎診断基準の4 回目の改訂となるが,その経緯や,診断基準の特徴と概要について解説する.
   診断基準改訂の必要性
   旧診断基準(Table 3)は,慢性膵炎に特異性の高い所見を確診,準確診に採用したため,進行した慢性膵炎の診断基準となっており,患者の予後改善につながりにくい点が問題であった.また,複雑であり,成因や病期も考慮されておらず,疾患特異性の低い膵外分泌機能検査だけで,慢性膵炎確診と診断されてしまう点も問題として指摘されていた.さらに,外分泌機能検査の中心に置かれていたセクレチン試験がセクレチンの国内生産中止によって施行できなくなり,準確診の外分泌機能検査に採用されていた便中キモトリプシン活性も試薬の販売中止により実施不能となった.このように,2001 年に一部改訂されたとはいえ,1995年の診断基準を骨子とした旧診断基準は,作成から長い歳月が経ち,臨床の現状にそぐわなくなっており,改訂が強く求められていた.
   診断基準改訂の経緯
   厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班(主任研究者;大槻眞)は,2002 年度より「慢性膵炎の早期像」5)および「慢性膵炎におけるEUS の有用性の検討」6)を,2003 年度より「アルコール性膵障害に対する新たな診断基準案作成;アルコール性膵症の提唱」7),2007 年度には「早期慢性膵炎の病態と診断;(1)早期慢性膵炎診断の基準と治療 指針の作成」8)および「(2)アルコール性膵傷害の初期像」9)を研究課題として取り上げ,診断基準改訂の準備を進めてきた.一方,日本膵臓学会は,2005年度に慢性膵炎臨床診断基準作成委員会を発足させ,改訂作業を開始した.2006 年に日本消化器病学会が「慢性膵炎診療ガイドライン」の作成を開始したのを契機に,2006 年6 月28 日,第37 回日本膵臓学会の前日に,第1 回慢性膵炎診断基準作成委員会が厚生労働省難治性膵疾患に関する研究班,日本膵臓学会,日本消化器病学会の合同で開催され,改訂作業が具体的に始まった.なお,慢性膵炎診断基準作成委員会は以下の13 名で構成された.下瀬川徹(作成委員長,東北大学),片岡慶正(京都府立医科大学[当時]),神澤輝実(都立駒込病院),宮川宏之(札幌厚生病院),大原弘隆(名古屋市立大学),成瀬達(三好町民病院),伊藤鉄英(九州大学),須田耕一(東京西徳州会病院),佐田尚宏(自治医科大学),竹山宜典(近畿 大学),白鳥敬子(東京女子医科大学),羽鳥隆(東京女子医科大学),大槻眞(産業医科大学[当時]).また,改訂の作業過程で,岡崎和一(関西医科学),能登原憲司(倉敷中央病院),乾和郎(藤田保健衛生大学),入澤篤志(福島県立医大),早川哲夫(名城病院)の各氏に助言を求めた.2006年の第1 回作成委員会以来,4 回の診断基準改訂委員会と,3 回の厚生労働省研究班報告会を経て,2009 年5 月9 日,第95 回日本消化器病学会で公聴会「慢性膵炎臨床診断基準改訂案」10)を行い,意見に基づいて修正を加えた.一方,6 月に入り,海 外から内視鏡超音波(EUS)所見による慢性膵炎 の診断基準Rosemont 分類が公表された11).そこ で,Rosemont 分類に従った用語の統一と所見の 重みづけに関して調整を行い,最終的に膵実質所 見5 項目と導管所見2 項目を早期慢性膵炎の EUS 所見として採用した.7 月14 日の厚生労働省 難治性膵疾患に関する調査研究班,平成21 年度第 1 回研究打ち合わせ会で最終案を確認し,7 月31 日,第40 回日本膵臓学会の特別企画「慢性膵炎臨 床診断基準改訂案―現行基準との比較―」12)の討 論を経て,8 月19 日から9 月12 日まで日本膵臓 学会ホームページに改訂最終案を掲載,パブリッ クコメントを求めた後,今回の公表となった.
   改訂基準の特徴 新診断基準は,旧基準の疾患概念を基本的に踏 襲した.一方,旧基準で欠落していた成因を考慮 し,慢性膵炎を病態の異なるアルコール性と非ア ルコール性に分類した.また,簡便で使いやすい 診断基準となるよう,基本的には画像所見または 組織所見の確診所見,準確診所見が認められれば 慢性膵炎と診断できる内容とした.一方,臨床症 候を診断基準に取り入れ,アルコール性膵障害に ついても早い段階で捉えられるよう配慮した.最 大の特徴は,早期慢性膵炎の疾患概念を診断基準 に取り入れたことである.病期を考慮した基準を 目指しており,その背景には旧基準のように進行 した慢性膵炎の診断基準では患者の予後改善につ ながる積極的な治療が難しいとの判断があった. 膵生検による組織診断が将来とも困難との予測か ら,早期慢性膵炎を臨床的に定義し,経過を前向 きに追跡することによってこの群の本態を明らか にしようという臨床上の大きな試みである.新診 断基準は,セクレチン試験,便中キモトリプシン 活性などの膵外分泌機能検査が実施不能な現状を 考慮し,画像診断を重視した内容となった. 改訂基準の概要 慢性膵炎を膵臓内部の慢性変化による病態と捉 え,進行すると膵内外分泌機能の低下をきたすと 定義した.病理学的に,病変は膵臓全体に不均一 に分布し,多くは非可逆性である.臨床的には腹 痛や腹部圧痛,膵内外分泌不全に伴う臨床症候を 伴うものを典型例とする.慢性膵炎を成因によっ て明確にアルコール性と非アルコール性に分類し た. 診断基準を,①特徴的な画像所見,②特徴的な 組織所見,③反復する上腹部痛発作,④血中また は尿中膵酵素値の異常,⑤膵外分泌障害,⑥ 1 日 80g 以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴, の6 項目で構成し,①と②には,確診所見と準確 診所見を設け,④と⑤の具体的内容を規定した. 慢性膵炎確診例は,①または②の確診所見がある もの,あるいは①または②の準確診所見が得られ, 臨床症候として③,④,⑤のうち2 項目以上がみ られるものとした.①または②の準確診所見が認 められるものが慢性膵炎準確診例である.実際に は,②項目の診断のためには,大きな組織標本が 必要であり,手術による膵切除例や剖検例など特 殊な場合に限られる.一方,③,④,⑤,⑥のい ずれか2 項目以上が認められる症例で,早期慢性 膵炎の画像所見が確認されるものを早期慢性膵炎 と定義した.③,④,⑤,⑥のいずれか2 項目以 上が認められるものの早期慢性膵炎に合致する画 像所見が確認されず,他の疾患が否定される症例 が慢性膵炎疑診例である.偶発症の問題から,早 期慢性膵炎の画像診断には,まず,EUS が行われ, 膵病変が強く疑われる有症状例に必要に応じて ERCP が行われる.診断の流れをフローチャート に示した(Fig. 1). おわりに 8 年ぶりにわが国の慢性膵炎臨床診断基準が改 訂された.新診断基準は病因を考慮し,早期慢性 膵炎の概念を取り入れ,臨床症候や飲酒を診断項 目に入れるなど斬新な内容となった.また,現状 を考慮し,画像診断に重点を置いた診断基準とし た.本診断基準の狙いは,慢性膵炎の早期診断に よって治療介入を早期に行い,患者予後の改善を 目指すことである.新基準が目的とするこのよう な役割を果たしているか前向きの検証が必要である。 診断基準の解説 ―1.定義と分類― 神澤輝実1) 下瀬川徹2) 定義 改訂基準では,慢性膵炎を現行臨床診断基準1)と 同様に,慢性膵炎を膵臓の非可逆性で進行性の炎 症性の病態と捉え,腹痛などの臨床症状と糖尿病 や膵外分泌不全による臨床徴候を典型例とした. 膵の慢性炎症 現行基準では“確診,準確診に合致しないこと のある膵臓の慢性炎症”として膵管狭細型慢性膵 炎と慢性閉塞性膵炎を挙げている1).膵管狭細型慢 性膵炎は,現在は自己免疫性膵炎として疾患概念 が確立されている.Etemad and Whitcomb2)の提 唱した慢性膵炎の成因の一つにautoimmune が 取り上げられているが,自己免疫性膵炎はステロ イドにより画像や病理組織像だけでなく膵機能も 改善する可逆性の病変であり(Fig. 1A, B)3),慢性 膵炎を非可逆性,進行性と捉える立場から,改訂 案でも現時点では自己免疫性膵炎を“膵の慢性炎 症”として別個に取り扱った.しかし,最近,経 過中に膵石形成や膵管拡張を認めた自己免疫性膵 炎の症例が報告されて,本症が通常の慢性膵炎に 発展する可能性も否定できない事より4),慢性膵炎 の分類における自己免疫性膵炎の取り扱いについ ては,今後,その長期予後について検討を重ねて 判断する必要がある. 閉塞性膵炎は,主膵管の一部に狭窄があり,そ の上流膵管内の膵液鬱帯により慢性膵炎様の変化 を生じる病態である5).外傷や急性膵炎後の主膵管 狭窄による上流膵管拡張や膵管癒合不全例の慢性 背側膵炎などが挙げられるが,内視鏡的膵管拡張 術やステント挿入や切除術などによる狭窄部の解 除により,病態が改善する例があり,閉塞性膵炎 も“膵の慢性炎症”として別個に扱った. 成因による分類 慢性膵炎の適切な治療方針を示すためには,診 断基準に成因を盛り込む事が望ましいと考えた. つまり,アルコール性慢性膵炎と非アルコール性 慢性膵炎の臨床病態が異なる事より,改訂基準で は慢性膵炎を成因別にアルコール性と非アルコー ル性の2種類に分類した. 2)
   慢性膵炎確診と準確診 改訂基準では現行基準と同様,所見の特異性の 高さによって慢性膵炎の診断を確診と準確診の2 段階とした.改訂案は,画像所見と組織所見を診 断の主要項目とし,“①特徴的な画像所見”と“② 特徴的な組織所見”に確診所見と準確診所見を設 けた.さらに,画像ないし組織上の準確診例で,“③ 反復する上腹部痛発作”,“④血中または尿中膵酵 素値の異常”,“⑤膵外分泌障害”のうち,2 項目以 上が認められれば,確診に診断をgrade up でき る.準確診所見はあるが,③④⑤の臨床症状や検 査所見が認められない例や1 項目のみ認められる 例は,最終的に準確診と診断される. 早期慢性膵炎と慢性膵炎疑診 改訂基準では,より早期に慢性膵炎を診断でき るよう,早期慢性膵炎の概念を取り入れた.膵炎 を疑わせる臨床症状,検査値の異常,飲酒歴のう ち複数の因子を有するもので,早期慢性膵炎に合 致する軽微な膵画像の異常所見がEUS または ERCP で捉えられるものを早期慢性膵炎,全く認 められないものを慢性膵炎疑診例と定義した.早 期慢性膵炎と慢性膵炎疑診に関しては,今後,長 期経過を追跡して,その実態を明らかにする必要 がある. おわりに 改訂基準における慢性膵炎の定義と分類につい て概説したが,これらの新しい事項に関しては, 症例を積み重ね,長期的検討を行って,その是非 を検証する必要がある.
   診断基準の解説 ―2.画像所見― 大原弘隆1) 中沢貴宏安藤朝章 林香月城卓志2) はじめに 近年,外分泌機能検査法として,以前から慢性 膵炎臨床診断基準に採用されているセクレチン試 験や便中キモトリプシン活性の測定が施行できな いことや,US,CT,MRI,EUS などの画像診断 機器の精度の向上により,慢性膵炎の診断におい て画像診断の果たす役割が増しつつある.そのた め,今回の慢性膵炎臨床診断基準は,画像所見を より重要視したものとなった.すなわち,「特徴的 な画像所見」の確診所見が一つでも得られた場合, それのみで「慢性膵炎確診」と診断することがで きる.また最近,偶発症の問題からERCP に代わ り施行される機会が増加したMRCP と膵管や膵 実質の軽微な変化を捉えることが可能である EUS の所見を積極的に取り入れた内容となって いる. 今回,この慢性膵炎臨床診断基準の画像所見に ついて,具体的な画像を示しながら解説する.な お,早期慢性膵炎の画像については本書の他稿に おいて解説されているため,本稿では省略してい る. 画像診断の概要 Table 1 に今回の慢性膵炎臨床診断基準におけ る画像所見の概要を示す.特徴的な画像所見は, 確診所見および準確診所見として,それぞれ4 項 目の所見が挙げられている.診断の手順としては, 確診所見の4 項目のうち1 項目でも認められる場 合,それだけで「慢性膵炎確診」と診断できる. 同様に,準確診所見のうち1 項目でも認められれ ば「慢性膵炎準確診」となる.さらに,準確診所 見がある症例のうち,反復する上腹部痛発作,血 中尿中膵酵素の異常,膵外分泌障害のうち2 項目 以上を満たすものは「慢性膵炎確診」に格上げさ れる.以下にそれぞれの所見について解説する. 画像所見 1.確診所見 1)膵管内の結石 US(Fig. 1),EUS(Fig. 2),CT(Fig. 3)のよ うに,膵管内に明らかな結石が1 個でも証明でき れば確診例と診断できる.膵石は,US やEUS では,基本的には音響陰影(acoustic shadow, Fig. 1,Fig. 2 の点線矢印)を伴う高エコーとして 描出される.分枝膵管内に存在する結石は5mm 前後のものが多く,音響陰影を証明しにくい.こ の場合でもEUS を用いれば,2~3mm 程度の小結 石までは音響陰影を描出しうる1). 2)膵全体に分布する複数ないしび漫性の石灰 化 US(Fig. 4),EUS(Fig. 5),CT(Fig. 6)で, 膵全体に分布する複数ないしび漫性の石灰化が認 められれば,それで確診例と診断できる.US や EUS では,明らかな音響陰影を伴わないものは膵 石から除外される.慢性膵炎では実質エコーが不 均一となり,蛋白栓などを反映した粗大高エコー を認めることがある2).また,US において弧状の 音響陰影が多発した場合,結腸ガス類似の所見が 得られるので注意を要する1). 一方,膵全体に分布する複数の石灰化とは,膵 頭部から尾部に分布する複数の石灰化であり,膵 辺縁や膵の一部に局在する石灰化は該当しない. 特に,膵に隣接した血管の石灰化像や膵周囲のリ ンパ節の石灰化を膵石と誤らないように注意を要 する
   3)ERCP 像で,膵全体に見られる主膵管の不整 な拡張と不均等に分布する不均一かつ不規則な分 枝膵管の拡張 US,CT などで慢性膵炎が疑われるが確定診 断には至らない症例や膵癌との鑑別を要する症例 ではEUS やERCP が行われる.今回の診断基準 では,画像診断の確診所見のみで「慢性膵炎確診」 と診断できるようになっているため,今までの診 断基準におけるERP 所見を「膵石」と同程度の重 みを持たせるよう厳しく設定されている.すなわ ち,不均等に分布する不均一かつ不規則な分枝膵 管の拡張のみでなく,膵全体に見られる主膵管の 不整な拡張も必要条件になっている(Fig. 7). 4)ERCP 像で,主膵管が膵石,蛋白栓などで閉 塞または狭窄している時は,乳頭側の主膵管と分 枝膵管の不規則な拡張 Fig. 8 のように,主膵管内に膵石が嵌頓してお り,ERP により乳頭から造影剤を膵管内に注入し ても,結石より尾側の膵管がほとんど造影されな い症例が見られる.そのような場合には,結石よ り乳頭側の主膵管と分枝膵管の不規則な拡張が認 められれば確診例と診断できる. 2.準確診所見 1)MRCP において,主膵管の不整な拡張と共 に膵全体に不均一に分布する分枝膵管の不規則な 拡張 MRCP は脂肪抑制下でT2 強調画像を撮影する ことにより,膵管や胆管を描出するもので,2001 年から診断基準の項目に加えられている3).今回の 診断基準では,Fig. 9 のように,主膵管の不整な拡 張と分枝膵管の不規則な拡張が膵全体に認められ れば準確診例と診断される. MRCP は主膵管の狭窄や拡張の描出に優れて おり,高度の狭窄のためにERP では造影が容易で はない尾側膵管も明瞭に描出される4).また, MRCP の利点として,ERP で見られる膵炎,穿孔, 逆行性感染などの偶発症が見られないことが挙げ られる.しかし,空中分解能に限界があり,分枝 膵管の微細な変化の描出は困難である5~7).した がって,現時点での慢性膵炎診療におけるMRCP は,主膵管や嚢胞性病変の拾い上げなどのスク リーニングや経過観察に有用であると考えられ る. 2)ERCP 像において,膵全体に分布するび漫性 の分枝膵管の不規則な拡張,主膵管のみの不整な 拡張,蛋白栓のいずれか 今回の診断基準では,旧診断基準におけるERP の確診所見であった分枝膵管の不規則な拡張が準 確診所見に変更され,より厳しいものになった. 3)CT において,主膵管の不規則なび漫性の拡 張と共に膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らか な変形 正常膵の辺縁はCT ではわずかに規則的な凹凸 を示すが,慢性膵炎ではFig. 10 のように不規則な 凹凸を示す.その所見と共に主膵管の不規則なび 漫性の拡張が見られる症例は準確診例と判定さ れ,確診所見の有無や膵癌との鑑別を目的とした ERP などの精査が望まれる. 4)US(EUS)において,膵内の結石または蛋白 栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を 伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形 今回の診断基準では,近年,施行頻度が増加し つつあるEUS がUS と同様に診断に用いられる 機器として明記された.所見としては,旧診断基 準の準確診所見であった「膵内の粗大高エコー」が Fig. 11 のような「結石または蛋白栓と思われる高 エコー」とより具体的に変更された.また,膵管 の変化(Fig. 12)と膵辺縁の変形(Fig. 13)の両者 が必要条件とされ,より特異性が高くなるよう設 定された. おわりに 改訂された慢性膵炎臨床診断基準改訂案の画像 所見について述べた.今回の診断基準は,画像所 見のみで診断できるようになっているため,従来 の基準に比較して,より厳しく設定されている. 今後,さらに多くの施設で多数例において検討を 重ね,慢性膵炎の臨床診断基準としての有用性が 確認されることが望まれる.
   診断基準の解説 ―3.組織所見―
   はじめに 膵には種々の慢性炎症,慢性障害がみられるが, これらがすべて慢性膵炎に該当するものではな い.このたび成因病因を加味した慢性膵炎臨床診 断基準の改訂,“慢性膵炎臨床診断基準2009”が構 成された.本稿では“慢性膵炎臨床診断基準2009” の組織所見について概説した. 慢性膵炎臨床診断基準2009 と従来の基準 “慢性膵炎臨床診断基準2009”の特徴的な組織 所見は,確診所見が「膵実質の脱落と線維化が観 察される.膵線維化は主に小葉間に観察され,小 葉が結節状,いわゆる硬変様をなす」であり,準 確診所見が「膵実質が脱落し,線維化が小葉間ま たは小葉間・小葉内に観察される」である. 因みに従来の慢性膵炎臨床診断基準では,確診 所見が「十分量の生検膵組織,切除膵組織などに おいて,膵実質の減少,線維化が全体に散在する. 膵線維化は不規則であり,おもに小葉間に観察さ れる.小葉内線維化のみでは慢性膵炎に適合しな い.このほか,蛋白栓・膵石と,膵管の拡張・増 生・上皮化生,嚢胞形成を伴う」であり,準確診 所見が「十分量の膵組織において,線維化がおも に小葉内にあるが膵実質脱落を伴う病変,ランゲ ルハンス島の孤立,仮性嚢胞のいずれかが観察さ れる」である1). いずれも組織所見の骨子である膵実質の脱落 減少と線維化は,臓器組織のいわゆる慢性炎症が 当該臓器固有腺の脱落と線維化で集約されるから であり,膵では外分泌腺腺房(実質)の脱落と線 維化で表される. “慢性膵炎臨床診断基準2009”の確診所見と 膵線維化の分類 慢性膵炎臨床診断基準2009 の確診所見では,膵 線維化は主に小葉間に観察される,である. 膵の線維化は,特にアルコール性で小葉間線維 化と小葉内線維化に大別され(Fig. 1),両者の移行 はみられない.小葉間の線維化は小葉周囲性にみ られ,病変の分布が不均一,patchy で細胞浸潤に 乏しい.小葉内には一般に線維化を認めない.線 維で囲まれた小葉は結節状をなし,硬変様を呈し ている(確診所見)(Fig. 2).これに対し,小葉内線 維化は腺房周囲性にみられ,均一に分布している. 両者は線維化の進行・進展性,総胆管狭窄閉塞や 脾静脈血栓などの合併病変,蛋白栓・膵石等の有 無において頻度が異なり,小葉間線維化が慢性膵 炎臨床診断例に相当し2,3),Kloppel らの見解もほ ぼ同様とみなされる4,5).線維化病変が進行すると 小葉間線維化では実質の線維置換が増え,結節性 膵炎像が小型化し2),最終的に線維で完全置換permanent loss of pancreatic parenchyma される6). 化と小葉内線維化に大別され(Fig. 1),両者の移行 はみられない.小葉間の線維化は小葉周囲性にみ られ,病変の分布が不均一,patchy で細胞浸潤に 乏しい.小葉内には一般に線維化を認めない.線 維で囲まれた小葉は結節状をなし,硬変様を呈し ている(確診所見)(Fig. 2).これに対し,小葉内線 維化は腺房周囲性にみられ,均一に分布している. 両者は線維化の進行・進展性,総胆管狭窄閉塞や 脾静脈血栓などの合併病変,蛋白栓・膵石等の有 無において頻度が異なり,小葉間線維化が慢性膵 炎臨床診断例に相当し2,3),Kloppel らの見解もほ ぼ同様とみなされる4,5).線維化病変が進行すると 小葉間線維化では実質の線維置換が増え,結節性 膵炎像が小型化し2),最終的に線維で完全置換permanent loss of pancreatic parenchyma される6).
   “慢性膵炎臨床診断基準2009”の準確診所見と 小葉間線維化 準確診所見では,線維化が小葉間または小葉 間・小葉内に観察される,である. 確診所見の小葉間線維化像は,蛋白栓や膵石に より膵管が狭窄ないし閉塞すると腺房・小葉が萎 縮して小葉内にも線維化が出現する.すなわち, 小葉間・小葉内線維化を呈する(Fig. 3).小葉間・ 小葉内線維化は,膵の慢性炎症として別個に扱わ れる閉塞性膵炎像7)であるため,当該症例の全体像 をみれば問題ないものの,それ自体は準確診所見 とされる. 線維化が小葉間に存在してもそれだけでは準確 診所見であり確診所見には硬変様の像が必要とな る.それは,閉塞性膵炎の初期あるいは軽度例で は小葉間にのみ線維化を示すからである.膵管末 端を種々の程度に狭窄閉塞する十二指腸乳頭部 癌例の膵組織では,程度に応じた膵障害がみられ る8).すなわち,軽度膵障害例では小葉間に軽度の 線維化がみられ,小葉が膨張性を示し,慢性膵炎 のそれに似ている(Fig. 4).十二指腸乳頭部癌によ る膵液排泄障害が増強した中・高度膵障害では小 葉間・小葉内線維化と腺房小葉の萎縮がみられ (Fig. 5),すなわち,慢性膵炎像ではなく閉塞性膵 炎像を示す. 慢性膵炎と閉塞性膵炎 膵における慢性炎症慢性膵障害の病理学的な 自然史はいまだ充分に理解・検討されていない. 代表的な慢性膵障害である慢性膵炎と閉塞性膵炎 を比較すると,前者が小葉間線維化と結節性の小 葉像が不均一,patchy に分布するのに対し,後者 は小葉間・小葉内線維化と小葉・腺房の萎縮が均 一にみられて異なっている.しかし,両者の初期 early stage と末期end stage の組織像が類似して いる.すなわち,膵癌十二指腸乳頭部癌等による 膵管閉塞の初期ないし軽い狭窄では前述のように 小葉間に軽度の線維化をみるのみで小葉内の線維 化や腺房の萎縮がなく,むしろ小葉が膨張性でパ ターン上,慢性膵炎的である.末期では終末像と していずれも腺房・導管が消失脱落し線維組織 に置換される6).このことより,慢性膵炎臨床診断 基準2009 の確診所見は,基本的な代表的な組織 像から構成されている. “慢性膵炎臨床診断基準2009”の運用留意事項 慢性膵炎の診断に当たって留意すべきは,病変 の分布が不均一で様々な進行性を示すため基本像 を拾い上げる抽出することが重要である.慢性膵 炎臨床診断基準2009 の確診所見は慢性膵炎に最 も特徴的であり他の慢性膵障害で類似した組織像 を示すことは極めて稀である.したがって,線維 化が観察されても直ちに慢性膵炎ではなく,特に 重要なこと避けねばならないのは切除膵などに おいて“癌がなければイコール慢性膵炎”ではな いのである.さらに,慢性膵炎臨床診断基準2009 では,膵管には全く言及されていない.すなわち, 慢性膵炎の病理診断組織所見は膵管の拡張・増 生,嚢胞化,上皮化生過形成等によって左右影 響されることはない. 準確診所見の小葉間・小葉内線維化は閉塞性膵 炎に特徴的な所見であるので特に注意を要する. すなわち,小葉間・小葉内線維化で準確診所見と する場合には病変の分布が不均一patchy か,そ れとも均一かに留意する.前者であれば慢性膵炎 の準確診所見,後者が閉塞性膵炎である. 生検組織への対応 生検標本で慢性膵炎の診断が可能かどうかにつ いて,与えられた組織標本内に確診所見,または 準確診所見に相当する像があれば,それぞれその ような診断ができ,もし含まれていなければ診断 がつかないことになる.このことは,特に膵臓に 限ったことではなく,消化管等一般の生検でも同 様である.
   おわりに “慢性膵炎臨床診断基準2009”は従来通り主と してアルコール性の慢性膵炎を念頭におき,従来 の基準をより簡潔・明確にしたものである. ―4.膵酵素―
   はじめに わが国では慢性膵炎は日本膵臓学会の診断基 準1)に従って診断されてきた.この基準では,膵臓 の組織を得ることが臨床的には極めて困難である ことを前提として,臨床症状と病理所見を反映し ていると考えられる膵の実質および膵管の形態学 的変化ならびに膵臓の機能低下をもって慢性膵炎 と診断している.学術的には妥当な診断基準で あったが,その後の医療をとりまく環境の変化の 中で,セクレチン試験など膵臓の機能検査を実施 することは不可能となってきた.また,膵炎の遺 伝的背景ならびに成因に関する知見が増えてきた こともあり,病因による分類の必要性も唱えられ るようになってきている.更に,慢性膵炎の治療 の観点から,より早期の病像を捉えて病変の進行 を治療により阻止する,もしくは遅らせることが できるのではないかという期待がある.この度, これらの問題に対応するために慢性膵炎の診断基 準を見直す作業が行われた.ここでは,今回の診 断基準改訂案における膵酵素の項目(Table 1)に ついて概説する. 慢性膵炎診断における膵酵素測定の役割 慢性膵炎の最も多い症状は,1999 年の全国調査 によると腹痛(47.8%),背部痛(30.6%),体重減 少(13.6%)である2).また腹痛の頻度は毎日が 18%,週に数回が11%,月に数回が18%,年に数 回が27% と,反復する上腹部痛が特徴である.無 痛性の慢性膵炎が少なからず存在することは事実 であるが,患者が医療機関を受診する最大の理由 は,この反復する上腹部痛発作である.しかし, 腹痛は他の消化器疾患でも多い症状であり,腹痛 が膵臓に由来する証拠の一つを膵酵素の測定で得 ることができる. 2008 年に改訂された急性膵炎臨床診断基準3) は,1)上腹部に急性の腹痛発作と圧痛がある, 2)血中あるいは尿中に膵酵素の上昇がある,3) CT,US またはMRI で膵に急性膵炎を示す所見 がある,の3 項目よりなる.この内2 項目以上を 満たし,他の膵疾患および急性腹症を除外したも のを急性膵炎と診断することとなっている.この 基準では慢性膵炎の急性発症は急性膵炎に含めら れている.従って,急性膵炎臨床診断基準1)2) を満たす「反復する急性膵炎発作」があれば,今 回の診断基準改訂案では,とりあえず「慢性膵炎 疑診」と診断される.ただし,②反復する上腹部 痛発作と③血中尿中膵酵素の異常は独立した診 断項目であるので,一方を欠く場合にも他の項目 を満たせば,慢性膵炎疑診と診断される. 血中膵酵素の異常:病態 慢性膵炎における血中膵酵素の異常高値は,急 性膵炎を併発した場合が頻度も多い.急性膵炎以 外にも,膵管系の狭窄や膵石蛋白栓などによる膵 液の流出障害による膵浮腫,膵仮性嚢胞の合併に より膵酵素の血管内への逸脱により血中膵酵素の 異常高値が生じる.通常,急性膵炎に伴う血中膵 酵素の上昇は一過性である.持続性の血中膵酵素 の上昇は仮性嚢胞の合併に起因することが多い. これらの機転は主に慢性膵炎の初期もしくは中期 (代償期)に起こる.一方,後期(非代償期)には 腺房細胞数の減少により血中膵酵素の異常低値が 観察されるようになる.この時期には急性膵炎を 併発しても,血中膵酵素の上昇は健常人の上限を 上回らないことがある.即ち,血中膵酵素の異常 に関しては,初期の膵炎の合併などによる異常高 値と,後期の膵外分泌機能低下を反映した異常低 値を分けて考える必要がある. もちろん,血中膵酵素の上昇をきたす急性膵炎, 膵管の閉塞機転や膵仮性嚢胞は慢性膵炎だけでな く,膵癌に合併することも稀ではない.CT,US またはMRI の膵画像を参考に血中膵酵素の異常 をきたす病態を推測することが診断と治療に重要 である. 血中膵酵素の異常:診断能 各種画像診断により慢性膵炎に特徴的な画像所 見(診断項目①)を認めないこともしばしば遭遇 する.このような場合に,血液膵酵素の測定はど の程度の診断能があるのであろうか?現行の日本 膵臓学会の診断基準では,画像診断にて確診所見 が得られない場合でも,膵外分泌機能不全があれ ば慢性膵炎と確診できる.そこで,診断項目③反 復する上腹部痛発作と④血中膵酵素の上昇を満た し,慢性膵炎に特徴的画像所見(膵石または膵管 像の確診所見)がない名古屋大学第二内科の症例 41 例(男性30 例:女性11 例,平均年齢36 歳,ア ルコール多飲者20 例:非多飲者21 例)を対象と して膵外分泌機能障害の有無を検討した.パンク レオザイミンセクレチン試験で確診所見(3 因子 低下)を認めたのは3 例(7.3%),2 因子低下は3 例(7.3%)でいずれもアルコール性であった.最 高重炭酸塩濃度のみの低下は27 例(65.8%)に認 め,アルコール性14 例,非アルコール性13 例で あった.即ち,33 例(80.5%)には何らかの膵外分 泌機能低下を認めるが,確診所見(外分泌不全)が ある非石灰化慢性膵炎は7% 程度,異常なしが8 例(19.5%)は全て非アルコール性であった. 次に,血中膵酵素の異常が膵外分泌機能をどの 程度反映するかを,日本膵臓学会診断基準による 慢性膵炎の確診19 例,疑診13 例および自己免疫 性膵炎7 例,計39 例(男性31 例:女性8 例,平 均年齢62 歳)を対象に検討した.自己免疫性膵炎 は改訂診断基準では慢性膵炎に含めないことに なっているが,診断項目③と④に該当する所見で 拾い上げられ,その後,特徴的な画像および血液 所見で除外されることになるので,解析対象に含 めた.血中膵酵素の値は,腹痛が軽減または消失 してセクレチン試験の施行が可能な時期での値で ある.Fig. 1~3 に示すように,この時期では大多 数の症例の血中膵酵素は健常人の平均値±2SD (標準偏差)内の値を示す.血中膵酵素が非常に高 い値(>+7SD)を示した慢性膵炎確診例は膵仮性 嚢胞を合併した症例である.即ち,腹痛発作との タイミングがずれると,血中アミラーゼおよびリ パーゼの異常高値の陽性率は10% 以下である.一 方,血中トリプシンの測定はラジオイムノアッセ イを用いているため感度が高いこともあり,陽性 率は31.5% である.慢性膵炎に伴う膵酵素の異常 高値の検出には,唾液腺型アミラーゼの上昇と鑑 別するためにも,トリプシンやエラスターゼの測 定が有用である. 慢性膵炎の進行により膵外分泌機能が低下する と,血中膵酵素の値は低くなる(Fig. 1~3).血中 アミラーゼは相関係数r=0.384(p=0.019),血中 リパーゼはr=0.428(p=0.015)程度であるが,血 中トリプシンはr=0.666(p<0.001)と膵外分泌機 能と最も良好な正の相関関係を示す(Fig. 3).セク レチン試験における膵液量の正常下限(平均 値-2SD)以下を膵外分泌不全と定義した場合, Table 2 に示すように,血中アミラーゼ,リパー ゼ,トリプシンの異常低値(平均値-2SD)の感度 はそれぞれ29%,36%,36% と高くない.しかし, どの酵素も特異度は非常に高い.特にトリプシン は特異度100% を示しており,腹痛発作のない時 期に血中トリプシンの異常低値が観察されたら膵 外分泌不全があると推定できる.その確認には CT による膵の萎縮の程度とBT―PABA 試験(診 断項目⑤)を施行すると良い. 尿中膵酵素 前述のように血中膵酵素の慢性膵炎の診断感度 は高くない.これは急性膵炎や膵浮腫に伴い血中 に逸脱した膵酵素は,速やかに代謝され血中から 消失するためである.血中膵酵素は尿中に数%程 度排泄され,その排泄量は血中への逸脱量に比例 する.従って,採血のタイミングを逸しても尿中 の膵酵素を測定すれば良いと期待される.尿中の 膵酵素の測定には主としてアミラーゼが利用され る.尿中アミラーゼ濃度は,膵疾患の有無にかか わらず,尿量の影響を大きく受ける.そこで,時 間尿が100ml 以上ある条件で,尿中アミラーゼの 単位時間排泄量を7 日間連続測定することが推奨 されてきた4). Fig. 4 は,前述の診断項目③と④を満たし,慢性 膵炎に特徴的画像所見がない41 例における膵外 分泌機能と尿アミラーゼ排泄量の関係を示したも のである.膵外分泌機能が正常下限(健常人の平 均値-2SD)以上保たれている患者では,尿中アミ ラーゼ排泄量は正常上限(健常人の平均値+2SD) を越えて上昇することがあり,尿中アミラーゼ1 週間法における複数回の異常高値は15 例 (36.6%)であった.しかし,膵外分泌機能が正常 下限以下の場合,即ち,日本膵臓学会の慢性膵炎 診断基準を満たす症例では,尿中アミラーゼ排泄 量は正常上限を越えて上昇することはほとんどな く,大多数は正常範囲内に分布していた.即ち, 血中膵酵素と異なり,尿中膵酵素の異常低値を定 義することはできない.そこで,診断基準は「尿 中膵酵素が連続して複数回にわたり正常範囲を超 えて上昇」を異常と定義している.いずれにせよ, 現状では尿中アミラーゼの測定は感度も特異度も 低い検査である. 最近開発された尿中トリプシノーゲン2 の測定 キット5)は,急性膵炎の時に大量に血中に逸脱した トリプシノーゲン2 が尿中に排泄されることを利 用したものである.本キットは,保険未収載であ るが慢性膵炎に合併した急性膵炎の診断には有用 と考えられる.慢性膵炎に合併した軽症の浮腫性 膵炎が本キットで検出できるかは今後の課題であ るが,適切なカットオフ値を設定することにより 尿中アミラーゼの低い感度と特異度を改善する可 能性のある検査法と考えられる. まとめ 慢性膵炎臨床診断基準改訂案における膵酵素の 項目を概説した.血中または尿中膵酵素測定は, 慢性膵炎の診断に関しては感度および特異度共に 低い検査である.しかし,反復する腹痛を有する 患者の中から慢性膵炎疑診患者を拾い上げ,US, CT などの画像検査により慢性膵炎を診断するた めに有用な検査である.また,慢性膵炎の経過観 察にも有用な検査であり,異常高値もしくは異常 低値の出現する病態を考えることが,診断のみな らず治療に必要である.

arrow  前ページ          次ページ  arrow